Vol.4 どこに行ってもウケない話(2019.2.1)

往生際が悪く、使い続けたネタ

コンサルタントいう仕事柄、いくつもの地域金融機関に訪問させていただき、様々な方と会話をしています。そのすべてで新たな話題を、というわけにもいかないので、世間話にはウケの良い話を使いまわしたりもするのですが、例外的に、どこに行ってもウケないにもかかわら ず、往生際が悪く使い続けてみた話があります。 

Who is “渋沢栄一”

セミナーなどで、金融庁が2013年に監督方針のなかで打ち出した「5〜10年後を見据えた中⻑期 の経営戦略を検討することが重要である」とい うメッセージを紹介することがあります。その際、私なりの解釈として「渋沢栄一以来の『殖産興業』という銀行の役割が終わり、あらたな 『あり方』が問われている」と補足をするのですが、ある時、反応をみてふと気になり 

「渋沢栄一を知ってるよね?」

と問いかけたことがあります。

すると、参加者 (20代半ば〜30代半ば)の約8割が「知らない」という回答でした。これが特殊な例なのか確認すべく、別の場所でセミナーの機会があった際にも質問してみたところ、結果はほぼ変わりません。 

細かな偉業は知らずとも、存在は知っていて欲しい(なにせ、日本の銀行の祖ですから)と思う私からすると驚きであり、これは「ウケる」 だろうと、地域金融機関の役員さん・部⻑さんなどにお話をしてみた結果が、冒頭の話につながります。だいたいが「まぁ、そんなもんかもしれませんね」という反応で、どこで話をして も、まったくウケません。仕方のないことなの かもしれませんが、私のなかには「それでいい の?」という気持ち悪さが残ります。 

この話を聞いた友人は、まったく別の業界での経験として「研修の最後にジャック・ウェルチの言葉を引用してるけど、40代以上でもジャッ ク・ウェルチはおろか、GEも知らない人がいてショックをうけたから、最近では『誰の言葉か』という説明はやめた」と言っていました。 どこも似たようなもののようです。 

こうした状況をもって、若い世代に「渋沢栄一も知らないのか。だから今の若手は・・・」と 言ってしまっては、典型的な『老害』になってしまうので、控えるように気をつけています。 

渋沢栄一

What is “ティール組織”

別の場でのことに話は飛びます。 

ある経営者の方に、地域金融機関の若手企画担当者むけに講演をしていただきました。その際、ビジネス書として異例の大ヒットとなり知られることになった「ティール組織」について言及がありました。ここで経営者の方が「ティール 組織って知ってる?」と質問したところ、ほぼ 全員が知りませんでした。どうやら、新たな潮流へのアンテナも、感度が鈍っているようです。

“勉強”がおろそかになっている 

もちろん、この2つの話で言いたいことは「渋沢栄一くらい知っておこう」「ティール組織を学ぼう」という表面的なことではありません。 私の抱く問題意識は、地域金融機関の皆さんが 目先のことにばかり目が行き過ぎてしまい、“勉 強”がおろそかになっているのでは、ということ です。 

当然ながら、ここで言う“勉強”は、知識を増やしてテストでいい点をとる類のものではありま せん。“魅力的な社会人”“変化に挑める社会人”と して、目先の業務や社内のこと「以外」に目を むけ、貪欲に学び、考える材料を外部から得て、 行動に移すための核となるものを指しています。

若手層だけの問題ではない

そして、これは若手層だけの問題とも思ってい ません。管理職の方々から出てくる言葉が「目先の業務」「社内の用語」だけになってしまっ ているから、若手層の興味関心が内向きになっ ていることも一因としてないでしょうか。 

“勉強”しようと思えば、今の時代、書籍は溢れ、 インターネットで多くの情報が取得でき、SNS でリアルタイムの意見交換もできます。あくま でも勉強するのは本人で、そのための材料はそろっています。ただ、そのキッカケ・意識づけが足りていないように思えてなりません。 

「人材が最大の財産である」 地域金融機関の中期経営計画で、よく目にする言葉です。まったくその通りだと思います。その財産を、より「魅力あるもの」にするために、 目先のこと以外にも目をむけている人材を増や してほしいな、というのが地域金融機関を応援 する者としての願いです。 

古典も、世界の最新潮流も、業務に直接は役立たないことのほうが多いと思います。一方で、 地域金融機関が従来の延⻑線上だけで強くなると思っている人も少ないはずです。だからこそ、 柔軟な発想を生み出す源泉として興味関心を拡げておく意義は大きいのではないでしょうか。 

最後にまったくの余談ですが、私は春から、仲間達と「古事記」を学ぶことにしました。「二柱の神様が夫婦の契りを結び、最初に生まれた のが淡路島である」「天皇に寿命ができたのは、 ある男の神様が、妻にと送られた2人の女神のうち1人をブサイクだからと実家に送り返した ため、その父親の神様が怒り、永遠の命を剥奪したから」と かの神話がたくさん あるようです。業務 に活かせる日がくるのかはまったく分か りませんが、話の引き出しは確実に増えるはずです。 

以上、髙橋昌裕からのYELLでした。