Vol.11 目指せ!「お願い営業」の達人(2019.5.3)

提案型の営業は「是」だが簡単ではない

地域金融機関が営業面で目指している価値観は、 「提案型の営業が是」「お願い営業は脱却すべきもの」といったところでしょうか。 

「提案型の営業が是」というのは、その通りかと思います。ただ一般的な営業担当者のスキルレベルからすると、実行はなかなか簡単ではないとも見ています。難しいことに対して物怖じしてしまい、かといって業績目標のこともあるので、不本意ながらお願い営業を繰り返してしまっている、なんていう営業担当者も少なくありません。 

「お願い上手」は優秀な担当者の一類型 

ところで、「お願い営業」は絶対悪なのでしょうか。私は、優秀な営業担当者の一類型として 「お願い営業が上手な人」というのは存在すると考えます。そして、こうした担当者の共通項は、お客様から「お前が言うなら仕方ないな、 協力するよ」と言われていることです。役員の皆様も、かつて営業担当者だった時代には、お客様にたくさんのお願いをして、「お前が言うなら」と協力してもらってきたのではないでしょうか。 

そう、キーワードは「お前が言うなら」とお客様に言ってもらえることです。 

この一言が付いてくる「お願い営業」は、絶対悪どころか地域金融機関が推奨すべき姿のように思います。さらに言えば地域金融機関に勤務する皆さんの人柄にマッチした、地域金融機関らしい営業スタイルとも言えます。 

親しさ・信頼・信任

「お前が言うなら」と言ってもらうためには、 日頃の接点を通じて、お客様に、親しさ・信頼感を持ってもらい、信任いただける関係になっている必要があります。 

そのためには、お客様への訪問など、接点を持つ際の目的関数、そして頭の使い方を、「商品 (融資・投信など)を買ってもらう」ことから、 「親しさ・信頼・信任を得る」ことへと大きく変えなければいけません。 

これを組織として一貫し徹底することができれば、お客様に愛される「お願い営業」の達人が増え、強く良い組織になるでしょう。 

「どこで借りても一緒」と言われたら負け 

「融資はどこで借りても一緒。だから、金利や 条件が良いところから借りるよ」 

こんなことをお客様に言われると、営業担当者から聞きます。でもこれって、そのまま受け入れて(諦めて)いいものでしょうか。この言葉が出てくる背景にあるのは「お前から借りたいという思い入れはない」、というお客様の厳しい評価です。それ故、言われたら負けです。 

拙著「実践!『現場営業力』強化セミナー」に書きましたが、中小企業の実権者は貸付形態・ 金額・金利・期間・担保といった機能的なもの (「機能ゾーン」)だけで借入先を判断しているわけではありません。これまでの関係や、感謝したこと、役に立ったことなど(結果としての親しさ・信頼・信任。「ブランドゾーン」) も含めて判断をしています。

ブランドゾーンの拡大こそが営業担当者の役割

【図】のように、融資にいたるまでの時間軸のなかで関係を構築し、「ブランドゾーン」の面積を大きくすることができていれば、最後の一手が「お願い」であったとしても、お客様は 「お前が言うなら」と選択してくれるでしょう。 

逆に、どこの金融機関も「売り込み」活動ばかりを繰り返し、親しさ・信頼・信任を得られてなければ、「どこで借りても一緒」と、お客様が機能面(金利・条件等)だけで決めるのも、やむを得ません。 「親しさ・信頼・信任」というのは一見すると 古い考えのように思えるかもしれません。しかし、流行りのクラウドファインディングであっ ても、成功の肝は、内容そのものよりも「この人がやるプロジェクトを応援したい」、というココロの部分なので、普遍的なものと言えるでしょう。 

「お前が言うなら」と、お客様に愛されている 「お願い営業」の達人だらけの地域金融機関。 目指す姿としてあっていいと思います。 

以上、髙橋昌裕からのYELLでした。