Vol.38 魅力的な人を増やす~教養の観点から~(2021.2.24)

すべては「人」次第

Vol.36・Vol.37は、地域⾦融機関は「⼈」次第、「⼈材」の強さ次第と定義して書きました。

今回は、「魅⼒的な⼈を増やす」という切り⼝で考えてみます。

人間的な魅力

地域⾦融機関のお客様にインタビューした際に、「以前いた○○⽀店⻑は、とても良かった」と固有名詞で名前が挙がる⼈は、総じて「⼈間的な魅⼒に溢れていた」という⽂脈で語られていました。

魅⼒があるからこそ、お客様との会話が増え、それが成⻑につながってさらに魅⼒を増し・・・という好サイクルもできていたことでしょう。

地域⾦融機関は、「魅⼒的な⾏職員が多い」=「地元の多くのお客様と良好で深い関係が構築できている」となるため、組織の強さに直結します。

魅⼒に溢れる⼈はどれだけいるか

ところで、いま、御⾏(庫)には、お客様から「魅⼒に溢れている」と評価してもらえる⾏職員は、どれだけいますか︖

もし胸を張れないならば、時間をかけてでも、魅⼒的な⼈を増やしていきましょう。

・・・と、言うのは簡単ですが、無責任な発言ですよね。魅⼒は多くの要素から成り⽴っていて、⼈によって魅⼒の発現の領域・仕⽅も違います。

故に、何をどうしたら魅⼒を⾼められるかは、具体化がとても難しいものです。それでも具体策に落し込むには、数多ある魅⼒の要素から⼀つを取り出し、そこに焦点をあてることが必要です。

中⾼年になると歴史や古典に興味を持つ

少し話が飛びます。

若い頃、諸先輩⽅(中⾼年層)を⾒て、「なぜ、歴史や古典、原理原則など(古臭く思えるもの)に興味をもつのか」がまったく理解できませんでした。そんな私は、最新のもの、すぐに成果に結びつきそうなものばかり追い求めていました。

しかし、40代も終盤になりこの数年を振り返ってみると、古典や芸術、学問など「本質的・教養的」な領域への興味が飛躍的に⾼まっています。

まったく理解不能だった領域に、まんまと⾃分も踏み込んでしまっていたわけです。

興味関⼼が変化した理由は、種々あります。
基本をおざなりにしてきたことへの後悔。新しいものを次々に追った結果、どれも根っこは同じだと気付き原理原則を理解したくなったこと。結果だけでなく原因(背景・構造)を理解することの⼤事さに気付いたこと。⻑く続くものに普遍的な美しさや意味があると感じたこと、等々。

理由はいくつもありますが、本質的・教養的なものに、もっと早くから触れて(学んで)おけばよかった、という思いを強く抱いています。当時の諸先輩⽅も、きっと同じ思いだったでしょう。

⾏職員の「教養」を⾼める

ここで先ほどの話と合体させます。

地域⾦融機関の「魅⼒的な⼈」の⼀つのタイプに、銀⾏の商品サービス「以外」についても豊かに話ができる⼈、お客様の趣味や関⼼事に関する話にもきちんと相⼿ができる⼈、というのがあります。「教養のある⼈」とも言えます。

こうした⼈は、誰に言われるまでもなく、⾃ら進んで本質的・教養的なものに触れてきたのでしょう。本来、教養とは、そういうものです。

しかし、⾃己反省も含め考えると、若⼿中堅のうちに教養の⼒を知り、⾃助努⼒で教養を⾼めることができる⼈は、⼀握りに限られます。

⼈数が少ないということは、その⼈の魅⼒・強さにはなりますが、組織の魅⼒・強さとはなりません。
だからこそ、⼈がすべての地域⾦融機関として、⼈の魅⼒、その集合体としての組織の⼒を強くする打ち⼿の⼀つとして、「⾏職員の教養」を⾼めることに、向き合ってはどうでしょうか。

組織的な取り組みの難しさ

組織として「⾏職員の教養」を⾼めようとしたとき、採りやすい策は、土日の任意参加セミナーの開催や、社外セミナーの紹介でしょう。ただ、受講者は極めて限定的で、かつ⼀回受講したところで(キッカケにはなり得ますが)教養が⾼まるかは疑問なので、これだけでは絶対的に不⾜です。

では、平日時間内に開催される正式な研修への組み込みができるかというと、「効果が⾒えにくい」という理由で採択されないケースがほとんどでしょう。

「論語を輪読しよう」「昭和史を学ぼう」「日本の伝統芸能に触れよう」「原書でドラッカーを読んでみよう」等々、業務研修と違って即効性ある効果は⾒えません。即効性ある研修(効果の説明可)と、教養系の研修(説明困難)とが天秤にかけられると、前者が採択されます。

しかし、論語を1年かけて輪読し、気付きを意⾒効果しながら、内面にも照らして考えていくことができれば、生き⽅にも影響を与え、⼈としての魅⼒も⾼まり、⻑期的な効果はあるはずです。

また、私⾃身のことを言えば、業務系のマジメな研修をいくつ受講しても改善できなかったプレゼンテーション⼒は、落語を聞き続けたことで気付きを得て、今では得意になりました。業務スキルとて、業務研修以外が役⽴つことは多くあります。

「教養に触れる機会を確保する」と決める

本来は⾃助努⼒でやるものを、組織として対応するのは容易ではありません。だからと言って、⾃助努⼒に任せきりでは、いまと何も変わりません。

まずは組織として、「若⼿中堅が教養的なものに触れる・学ぶ機会を、これだけ確保する」と決めることからスタートしてはどうでしょうか。業務系と教養系とを天秤にかけないことが⼤事です。


効果はすぐに⾒えませんが、ここに⼈材育成の時間とコストをかけた組織は、5年後には魅⼒的な⼈が増え、組織⼒も⾼まっているでしょう。そんな姿を目指して欲しいと思っています。

以上、髙橋昌裕からのYELLでした。