Vol.5 経営者保証に依存しない融資が増えてきた(2019.2.15)

新規融資の19% 

金融庁から「経営者保証に関するガイドライン の活用実績」の最新データの公表がありました (2019年1月28日)。これによると、⺠間金融 機関での2018年度4〜9月における新規融資件数 のうち、「19.1%」が経営者保証に依存しない 融資とのことです。過去に遡って調べたところ、 2015年4〜9月(=「経営者保証に関するガイド ライン」が定められた翌年)は12.1%だったの で、3年間で7ポイント上昇したことになります。 「これまでの常識」に挑みながら、官⺠一体となった推進により実績を伸ばし、中小企業経営者を勇気づけることができているのは素晴らしいことです。 

もちろん、闇雲に経営者保証を外せばいいわけではありません。「適正な」判断のもと次なる目安として25%ぐらいまで進んで欲しいな、と期待しています(なお、あくまでも参考までにですが、政府系金融機関の実績は、2015年度 24%、直近で36%となっていました)。 

新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合

「経営者保証ナシで」と言ってみた話

中小企業経営者むけに「地元の銀行との上手な付き合い方」というセミナーを行うことがあります。そこでは「金融機関に“応援される”経営者になろう」というメッセージを投げかけているのですが、質疑などを通じて、経営者保証への関心の強さを実感します。 

2年前にセミナーに参加くださった方も、経営者保証に頭を悩ませる一人でした。セミナー後、 メインバンクに対して、自社の業績や取組みを伝え、14%(当時)が経営者保証ナシでの融資ということを話題に出し、次からは当社も経営者保証ナシで融資をして欲しい、とやんわりと伝えたそうです。すると、メインバンクからは 「わかりました」との回答を得ることができたそうです(結果的に、新規融資だけでなく、既存分も保証解除となりました)。 

この話を聞き、こんな簡単に経営者保証を外してくれるなら、経営者の側から言わないでも対処してよ、とは思ったものの、そうはいかない事情があることも理解できます。 

経営者に具体的アドバイスはできているか

この件を学びとして、以降は、中小企業経営者に2つのことを伝えるようにしています。 

  1. 金融機関に自社の理解を深めてもらえるよう、 とにかく情報提供を積極的・定期的に行うこと。経営者保証に関して言えば、自社を深く理解してもらえていなければ、金融機関が保証を外すはずはない。十分な理解があって初めて、外せるか否かの検討の俎上にのる 
  2. 経営者保証を外したければ、金融機関に対し て「当社は、何をどう改善すれば、経営者保証を外してもらえるようになりますか。経営努力していくので、具体的にアドバイスをしてください」と言ってみること。金融機関と共有した目線で取組むことが最短経路となる

1のように情報提供を進めてくれれば、金融機関側も「事業性評価」などを行ううえで大きなメリットがあるはずです。金融機関・中小企業経営者の双方にとって望ましい状態が作れると考え、このようなメッセージを発しています。 

2は金融機関の担当者がすぐに回答できるだろうか、とやや疑問に思いながらも伝えています。 冒頭で、経営者保証に依存しない融資の割合が増えてきたと書きましたが、既存分も含めて、 そうは言ってもまだ主流は保証が付いています。担当者は、自身の担当先のそれぞれについて、 

  • 何がどうなったら、保証を外すことが可能 (そう)かを考えたことがあるでしょうか?
  • その要件(例:赤字体質や債務超過の解消) をクリアするため、自分(自社)ができるこ とを具体的に考えたことがあるでしょうか?
  • そして、それを経営者に伝え、共有してきたでしょうか?

最初の点は、独自のチェックシートを作成して いる金融機関も多いので、それを出発点として使うこともできます(ただしチェックシートが 実践的なものになっていればですが)。より大事なのは2点目・3点目です。ここで経営者にアドバイスをし、改善にむけ促し・寄り添う ことは、経営者保証の有無だけにとどまらず、 その中小企業を強くすることにつながります。 もちろん、一連のプロセスを通じて、担当者もレベルアップできます。 経営者を悩ます「経営者保証」を起点として、 お客様も行職員も、もっと強くなれるはずです。 

以上、髙橋昌裕からのYELLでした。