Vol.30 AC(Afterコロナ)で元に戻さない(2020.5.19)

緊急事態宣⾔の一部解除

5/4に新型コロナウィルスにともなう「緊急事態宣⾔」の延⻑が発表されてから10日後、39県で緊急事態宣⾔が解除となり、少し明るい兆しが⾒え始めてきた、といったところでしょうか。
東京も、昨日(5/18)発表の新規感染者は10名でした。あと少しですね。気を緩めることなく、私は都⺠の⼀⼈として、⾃粛⽣活を続けていきたいと思っています。

「元に戻そう」でいいのか

「これでようやく、元に戻れる」
「段階的に、元の態勢に戻していこう」

三密を避ける必要性から、仕事の、⽣活の、何もかもが急に不⾃由になってしまったわけですから、こんな思いを抱くのは、当たり前です。
でも、本当に「元に戻る」でいいのでしょうか。
対・新型コロナのことだけを考えても、効果的なワクチンの開発前に、第⼆の流⾏が襲う可能性が高いと⾔われています。我々が変化をせずに「元に戻って」いたならば、またこの⾃粛の苦しみを味わうことになってしまいます。
さらに、前号Vol.29で書いた「起こったことは、すべていいこと」のマインドセットを活かすと、変革・進化の観点から「元に戻ってはもったいない」こともあるのではないでしょうか。
まずは私⾃⾝の卑近な例で恐縮ですが、BC(Beforeコロナ)は、経営コンサルティング・講演・研修と、いずれも対面が前提の仕事をしていました。それ故に、4/3の講演を最後に、対面の予定はすべてキャンセルとなり、仕事関係では誰とも会わない日が今も続いています。収入0に陥る恐怖もあるなか、4月の半ばすぎまでは「早く元に戻らないかな」と願っていました。
ただ、並⾏して三密リスク「ゼロ」のビジネスも、複数のクライアントさんの協⼒もとで開発を進め、オンラインでもコンサルティング・講演・研修ができるようになってきました。非対面というのは、BC時代には考えもしなかったことです。対面とは別の難しさ・対面以上の難しさはありますが、移動時間からの解放で対応余⼒が増えたというメリットもあります。
これは、私にとって新型コロナ禍があったからこそのビジネス形態の進化であり、AC(Afterコロナ)になったからといって、対面が前提のサービスのみに戻るつもりはありません。

「得られたもの」を失わせない

さて、話を地域⾦融機関に戻しましょう。
前号でも触れましたが、BC時代の地域⾦融機関は、「変わりたいけど、変われない」という悩みに溢れていたはずです。だから「元に戻る」思考は、そもそもマッチしません。
さらに、この1~2か月の緊急対応のなかで得られたものも「元に戻る」ことで失わせてはもったいないです。
たとえば、「大変だけど、今が⼀番、お客様のことを真剣に考えられ、やり甲斐を感じている」と前向きな⼼に⽕がついた⾏職員の気持ちは、この先もずっと維持・強化をしていかなければなりません。当座の資⾦調達でなんとか⽣き繋ぐことができた取引先に対し、ACでは新たな成⻑にむけ、これまで以上に寄り添いサポートしていく、難度の高いことが待ち構えています。このときに、「目先の案件獲得(業績目標)が優先で…」とBC時代の思考・⾏動に戻っては、⾏職員にとっても、地域のお客様にとっても不幸です。

実現できたのは凄いこと

業務の効率化も「元に戻してはならない」代表的なものになります。
もしも、新型コロナが無いなかで、業務改革チームが「試⾏期間ナシ、仕組みの大きな組換えナシで、営業店を半分の⼈数で明日から運営したい」と上申してきたら、YESと意思決定できる経営陣は、どこの組織であっても皆無だったでしょう。「なにをバカなことを⾔ってるんだ」「マジメに仕事しろ」と⼀蹴したに違いありません。
しかし、今回の騒ぎのなかで(半分か20%かの⽔準はともかくとして)TRYしたら、できました。これができたというのは、凄いことです。⾃信をもってください。誇っていいことです。
今は、不急な⽤件の来店客の増加で店頭の忙しさはあるでしょうが、時が経てば落ち着きます。これを、「段々と元の営業店態勢に戻そう」としては、もったいなさすぎます。
さらに⾔うと、各⾏・庫の経営計画のなかで業務改革の効率化目標を定めていたら、その⽔準が緩すぎないか、確認・⾒直しをしてください。仮に効率化目標が3年で20%だったら、1年で50%(超)に上書きしませんか。なにせ皆さんはこの短期間で、少⼈数運営をやり遂げたわけですから。

進化に活かす、そしてチャレンジする

この他にも、新型コロナ禍により、得られたものがあるはずです。経営の皆さんにとって「嬉しい誤算」もあったでしょう。
それらを洗い出してみて、「元に戻す」のではなく、AC時代の進化にどう活かしていくかを考えてみてください。そして、検討に時間をかけすぎることなく、チャレンジしてみましょう。今年ほど新たなチャレンジの許容度が高い年はないと思います。仮に上手くいかなくても「ぜんぶコロナのせい」でいいじゃないですか。


「チャンスは、ピンチの顔をしてやってくる」という⾔葉もあります。これを機に、変革・進化に進みましょう。そして最後に、前号に引き続いて、地域のお客様を守るために全⼒で挑まれている皆さまの活動に最大限の敬意を表します。
以上、髙橋昌裕からのYELLでした。