「企業アンケート調査の結果」
⾦融庁から、今年も「企業アンケート調査の結果」が公表されました(8月31⽇)。それを⾒て考えたことを3つ書きます。
顧客接点の復活
コロナをきっかけとして、銀⾏と企業、特に債務者区分の低い先との接点が増えたことが、アンケートP.14(=図1)からうかがえます。具体的には、資⾦繰り⽀援にとどまらず、経営改善⽀援サービスも受けた割合が、債務者区分の低い先ほど⾼くなっていました。「⽇本型⾦融排除」と言われ始めた頃と比べると、大きな違いです。
【図1】
そして大事なのは、今後です。ゼロゼロ融資の返済も始まるなかで、コロナで復活した接点を活かし、企業をサポートし続けられるかです。
ゼロゼロ融資を、既存のメインバンク「以外」が対応したケースも少なくないようで、「残⾼メイン」や「⼼のメイン」といった言葉も、チラホラと耳にします。両方の「メイン」が、競うようにサポートに乗り出す⼼づもりがあれば良いですが、逆に「当⾏はゼロゼロで残⾼が増えただけで、繋がりは強くない」「今回のゼロゼロを他⾏から借りたなら、今後のサポートはそちらにしてもらうべき」などと、譲り合い(逃げ合い)が起こらないことを願うばかりです。
基礎⼒を⾼めることの重要性
⾦融機関による経営改善⽀援サービスについて、「取引先・販売先の紹介」ニーズが⾼く、「経営⼈材の紹介」は⼿数料を⽀払っても良いとの回答が多くなっていました(アンケートP.16,33)。前者は、当たり前です。後者は、困り度が⾼く、解決の難易度も⾼いことを⽰しています。⾦融機関としても、これからが本腰の入れ時です。
それよりも、経営改善⽀援サービスに関する一連のアンケートで私が着目したのは、「資⾦繰り表の作成⽀援」「事業計画策定⽀援」「財務内容の改善⽀援」です。これらは、先の2つに比べるとニーズも⼿数料の⽀払意向も目⽴っていませんが、アンケートP.31(=図2)を⾒ると、⾼い満⾜度を得ていました。
【図2】
これは、⾦融機関としての基礎⼒の強化を軽視してはいけないとの⽰唆だと理解しました。先の2つに比べ派⼿さはないですが、それ故、確実に価値を発揮すべき領域です。強固な基礎があったうえで、先の2つに挑戦という構図でしょう。
話は逸れますが、アンケートP.6には、資⾦繰り表について2割の企業が「未作成」とありました。私の肌感覚よりも、かなり少ないです。経営者の思い込みか、保証協会に提出するレベルの粗いものも含めての回答なのかもしれません。
「企業との課題共有先」に関する思い
アンケートを⾒ていて、クスッと笑ってしまった箇所があります。それは、アンケートP.22の「企業との課題共有先」についての記述です。
他のページも、すべて外部調査により得た客観的なアンケート結果が載っていますが、P.22だけ「客観的な回答結果を提⽰する」との記述がありました。過年度と同様に、今年のアンケートでも企業の課題等について「聞いてくれる」「伝えてくれる」、かつ「納得感がある」の3つが揃った先は、取引継続意向が有意に⾼いという結果がでています。これを作成者は強く強く訴えたいが故に、あえてここだけ「客観的な回答結果」と一歩引いた表現を用いたのかな、と感情を推察した次第です。
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アンケートは、それぞれの銀⾏・⽴場・⼈の目線で⾒ることで、気付きが多くあります。思考の材料として活かすことで、さらに強く良い地域⾦融機関が増えることを楽しみにしています。
以上、髙橋昌裕からのYELLでした。