メガバンクでの個人的な体験
個人的な用事で、時折、⾃宅の最寄り駅にあるメガバンクを利用しています。今号は、そこでの体験から、地⽅銀⾏の店頭窓⼝の⽅向性について、考える材料を投げかけます。
嬉しかったこと
最初に、私の体験をお話します。今春、次⼥の⼤学⼊学⾦の振込手続をしにメガバンクに⾏きました。その時の流れは、次のとおりです。
・番号カードをとり、呼ばれるまで待つ
・呼ばれて窓⼝へ⾏き、振込用紙と現⾦を渡す
・手続の間、椅子で待ち、呼ばれて窓⼝に戻る
・振込用紙の控を受け取り、手続き終了
ごくごく一般的なオペレーションです。
しかし、一般的でないこともありました。振込用紙の控を受け取る際に、テラーの⼥性(⾯識なし)から「⼤学の⼊学⾦ですね。コロナがあったので、お子様もご家族も不安があって⼤変だったかと思います。おめでとうございます」と笑顔で声をかけられたことです。
振込時期と内容・⾦額を⾒れば、100人中、99人が⼤学の⼊学⾦とわかるでしょう。それでも、こうした声をかけてもらうとは思わなかったので、⼼温かく、嬉しい気分になり銀⾏を後にしました。
この支店は、法人対応を全廃していて、会社の税⾦等の納⼊手続は、一切できません。そのため、⾃宅の最寄りながらも、気持ちは遠かったのですが、この一⾔で、一気に好感度が⾼まりました。
残念だったこと
時は半年流れて、今年9月のことです。今度は、⻑⼥の⼤学授業料の下期分を振り込むため、またこの支店に⾏きました。この間に、店頭窓⼝の脱現⾦化・機械化が進み、前回とはオペレーションが⼤きく変わっていました。
・番号カードをとり、呼ばれるまで待つ
・呼ばれて窓⼝へ⾏き、振込用紙を渡す
・QRコードが印刷された紙を受け取る
・窓⼝列の別の場所にある専用端末に移動
・専用端末にQRコードを読ませ、現⾦を投⼊
・専用端末から出てきたレシートを持ち、最初の窓⼝に戻って、レシートを渡す
・手続の間、椅子で待ち、呼ばれて窓⼝に戻る
・振込用紙の控を受け取り、手続き終了
途中で専用端末への移動・処理という新たな⼯数が加わりました。このオペレーションの変更により、窓⼝業務は効率化し、窓⼝の脱現⾦化で事務ミス・事故の抑制にもつながっていることでしょう。また、現⾦振込の客を減らしたい、という狙いも叶えられるのではと思います。
この時、来店客は、私ともう一人しかいませんでした。閑散日の閑散時間帯です。
しかし、テラーとは事務的なやりとりしかありませんでした。前回、⼼地良い気分になっていたので、今回も⼼のどこかで一声かけてもらえるかなと思っていただけに、移動の負荷増+事務的な対応に終始したやりとりに、かなり残念な思いになり店を後にしました。
地⽅銀⾏の店頭窓⼝の⽅向性
メガバンクが店頭対応の効率化を一気に進めるなか、地⽅銀⾏はどのような⽅向に進むべきでしょうか。
「効率化」「機械化」「脱現⾦化」の⼤きな流れに抗う必要はありません。進めるべきです。
ただし、⼤事なのは、これらの結果できた余裕を、お客様とのコミュニケーションに充てることです。ここでの「コミュニケーション」は、ローカウンターでの時間をかけた相談対応を意味してはいません。もっと手前にある、笑顔での会話です。手続に来たお客様に対し、ミスなく早く処理を終えてお帰りいただくことができても、お客様の感情指数は可もなく不可もなくプラスマイナスゼロです。しかし、ちょっとした会話で⼼地良くなれば、感情指数はプラスに振れます。このプラスは、銀⾏にとって資産です。
処理は機械が進めるにせよ、人が向き合って対応し、コミュニケーションをとることで、地域⾦融機関の良さが維持されます。他⽅で、「人と人との泥臭さ」を失ったとき、地域⾦融機関の特徴・強さも同時に失われてしまいます。オンライン取引が主流へと向かうなか、だからこそ来店したお客様には、密な関係を築くことが⼤事ではないでしょうか。
また、ローカウンターでの相談対応を強化するためにも、お客様の感情指数のプラスを積み重ねておくことは必要です。⼼地良い場所・相手でなければ、相談しようとも、⾦融商品の説明を聞こうとも思わないからです。
前段に⼼地の良いコミュニケーションが存在し、関係性ができているからこそ、ローカウンターが活きてきます。
「資産」という観点
近時、「店舗=⾼コストな存在」という捉え⽅が強調されているよう⾒ています。たしかに、OHRの低下といった点からは正しいでしょう。
しかし、一⾯的な⾒⽅だけではなく、地域とつながる⼤事な「資産」、地⽅銀⾏だからこそ活かすべき「資産」という観点は、持ち続けて欲しいと思います。土地土地に看板を掲げていることは、メガバンクやオンライン系のプレイヤーには真似できない地⽅銀⾏の絶⼤なる強さです。重厚⻑⼤な従来型の店舗様式を維持し続ける必要はありませんが、地域のお客様とのコミュニケーションを育む場、そして⾦融⾯からお客様の⽣活・人⽣をサポートする場であり続けることを期待します。
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「銀⾏の窓⼝に手続に⾏ったら、嬉しい気持ちなった」。地⽅銀⾏の店頭を訪れたお客様で、春先の私のような人が増えるといなと思っています。
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以上、髙橋昌裕からのYELLでした。