ビジネスプランコンテストが増えてきた
ここ3年くらいで、ビジネスプランコンテストを実施する地⽅銀⾏が増えたように感じています。新たなビジネスは「活⼒」となるため、素晴らしいことです。
さて、そのビジネスプランコンテストですが、応募の対象者によって、2タイプに分けられます。
1)対外的なコンテストとして、外部の企業や学生などが応募してくるもの
2)⾏内のコンテストとして、⾏員が応募してくるもの
両者を実施している銀⾏も、いずれかのみ実施している銀⾏も、はたまた実施を検討中の銀⾏もあることでしょう。
本号では、2)を採り上げ、私の地⽅銀⾏での支援ケースをもとに、ビジネスプランコンテストを「人材育成」の機会としてさらに活かすためのポイントを共有します。
⾏内コンテストの実施スタイル
まずは、⼀般的な2)の実施スタイルを整理しておきます。多くは、以下のような形で実施しているのではないでしょうか。
①コンテストの期間内に、⾏員が規定のフォーマットにアイデアを書き込み応募
②事務局にて書類審査のうえ、役員も参加する本審査に臨む案件を選定
③本審査では、応募者が役員の前でプレゼンテーションをしてPR
④最優秀案件・優秀案件が選ばれ、表彰
⑤最優秀案件・優秀案件は、応募者自ら、もしくは所管部の手により事業化を検討
新たなビジネスの検討を促す機会として、ビジネスプランコンテストは機能していると思います。故に、このスタイルでも、問題はありません。
応募「全件」へのフィードバック
それでは、「人材育成」にさらに活かすためのポイントはどこにあるでしょうか。
私の支援ケースでは、②の箇所に圧倒的な工数をかけている点が最大の特徴です。
具体的には、応募「全件」について、案件をより良いものとする(ビジネスプランとして昇華させる)ためのフィードバック面談を、事務局から応募者にしています(フィードバック内容の作成に、外部コンサルタントの私も関与しています)。
そして、フィードバックを受けて案件を進化させたうえでの再提出を、2回まで認めています。さらに、希望者には外部コンサルタントとのディスカッション機会も提供しています。
多くの場合、初回の提出のみでアップデートをしない案件と、フィードバックをうけ再提出をした案件とでは、後者の⽅がより魅⼒的なビジネスプランになっています。コンテストの公平性という観点から疑問を感じるかもしれませんが、内部的な人材育成の機会であり、機会の公平は担保しているので、問題となったことはありません。
事務局は大変だが、最高の人材育成機会
正直、事務局側はかなり大変です。
それでも、ここまで手をかけることで、アイデア勝負で終わらせず、「応募者全員」が、自分が考えたことについて第三者からの「フィードバック」をもらえ、「気付き」を得る貴重な学びの機会、まさしく人材育成の場になっています。ここが、⼀般的な実施スタイルと大きく異なります。
ちなみに、①の応募に際しては、「リーンキャンバス」(図参照)をもとに、自⾏風にアレンジしたものを規定フォーマットとして使っています。⼀⾒するとシンプルですが、いざ自らのアイデアを書こうとすると、うまく書くことができないところから、「気付き」は始まります。
【図︓リーンキャンバス(アレンジ前のもの)】
また、提出後には「それでお客様の課題は本当に解決できそう︖」「優位性は地元での信用⼒だけでなく、こんな点もあるのでは︖」「なぜ外部企業は当⾏をパートナーに選定してくれるのだろう︖」「HPに広告を載せただけで、お客様は気付いてくれるかな︖」「実施にあたってシステムコストが莫大にかかりそうだけど、回収は何年くらいでできそう︖」「想定の単価を払ってもらうには、こんな魅⼒を加えられないかな︖」etc… といった、アイデアをビジネスプランに昇華させるための問を受け、さらに「気付き」を得ます。
また、副次的な効果も⾒られました。⼀連のプロセスを通じてビジネスを作り上げる難しさを実感することで、中小企業が収益を上げ続けていることの凄さや大変さがわかり、お客様である中小企業を⾒る目が変わってきたそうです。
テーマを設けてさらなる発展も
ビジネスプランコンテストは、テーマを決めることで発展性をもたせることもできます。
たとえば、ビジネスプランの要件に、「地元のお客様の有する商品・サービス・強さ」を活かすことを必須とする、等です。こうした表彰部門を設けることで、いま以上に、お客様のことをよく知ろうという機運が盛り上がれば、⼀挙両得です。
.
.
この手の取組みは、回を重ねていくことで、質も上がっていきます。2年目、3年目と、出てくる案件に魅⼒的なものが増えてくれば、それこそが人材が育ってきた証であり、組織⼒が上がった証です。ビジネスプランという新しいことを考える機会をキッカケに、強い人材が増えることを楽しみにしています。
.
以上、髙橋昌裕からのYELLでした。