新⼊社員・大学⽣との接触
今春、いくつかの地域⾦融機関・企業で、新⼊社員研修をやらせてもらいました。また、大学の⾦融イノベーション論の講座で特別講義をする機会も頂戴し、例年以上に若者と接しました。
私事ですが、上の⼦供は今年社会⼈1年目、下の⼦供は大学2年⽣で、研修・講義をした若者たちと、ぴったり同世代です。「自慢話は嫌われるから、絶対にしないように」という⼦供からの的確なアドバイスを胸に、親が⼦を⾒守るような目線で、例年以上に優しい気持ちをもって研修・講義を⾏ったのは⾔うまでもありません。
社会⼈らしさが増した新⼊社員
時は何か月か過ぎ、職場に正式配属され頑張っている、新⼊社員の何名かと再会しました。
話をしていると、早く一⼈前になろうと、一所懸命に仕事を覚える努⼒をしていることが伝わってきます。職場の上司・先輩も、「早く銀⾏という組織に慣れてほしい」「早く銀⾏業務をマスターしてほしい」という気持ちで接してくれているのでしょう。
こうした環境で過ごすことで、かなり社会⼈らしく、銀⾏員らしくなってきたなと感じました。新⼊社員研修時の「学⽣らしさ︓社会⼈らしさ」が「9.5︓0.5」だったのに対し、今は「6︓4」くらいです。あと半年もすると「2︓8」になるのでしょう。頼もしさを感じます。
組織の色に染まる
一方で、すこし「勿体ないな」と思う感情も⽣まれました。
新⼊社員研修の頃と比べて、明らかに話す内容が「組織の中の⼈」「きちんとした優等⽣」の視点になっていたからです。本音を話すよりも、「正しいことを話す」ことへの意識が強くなっているとも感じました。
新⼊社員を、社会⼈・組織の色に染める、という観点では成功ですが、本当にその一方通⾏だけでいいのでしょうか。
新⼊社員は若者目線を持つ貴重な存在
翻って、銀⾏は若者との接点確保・取引拡大を⻑年の課題としています。若者の⽣の声を聞きたいはずです。
そう考えたとき、新⼊社員は、内部でありながら、もっとも外部の目線、しかも若者層の目線を持っている貴重な存在です。コストをかけずとも話を聞くことができます。
新⼊社員が銀⾏に⼊って感じた「不思議に思ったこと」「間違ってると思ったこと」「勿体ないと思ったこと」を拾い上げてみると、その中に自⾏庫が次世代を切り拓くためのヒントがあり、それらは銀⾏組織にとって大事なINPUTになるでしょう。
社会⼈らしく、銀⾏員らしく育てていくことを否定はしません。もちろん大事です。しかし、今のまま半年、一年と過ぎれば、組織にとって大事な気付きを無意識のうちに封じ、INPUTを得る機会を永遠に失ってしまうのではと危惧します。
新⼊社員の気付きを経営陣にプレゼント
新⼊社員と再会した日、この銀⾏の企画担当の役員ともお会いしました。上記の問題意識とあわせて、「新⼊社員に気付きのレポートを作成してもらい、それを経営陣へプレゼントしては」とお伝えしました。
「プレゼント」と表現したのは、新⼊社員に課題として「書かせる」「提出させる」という意識で臨むと、その裏に「評価される」ことを感じ、本音とは異なる優等⽣的なことを書くだろうと思ったからです。こうしたレポートは、読んで面白いはずがありません。また、新⼊社員の本音は、若者目線から経営陣に気付きをもたらす、⽂字通りの「プレゼント」だとも思っています。
レポートを読むと、「社会⼈がなんたるかが、まるで分かっていない」「銀⾏組織とはそういうもの」と、切り捨てたい気持ちになるかもしれません。しかし、そう簡単に切り捨ててしまっては、次世代を切り拓くヒントを⾒つけられるはずはありません。
変化の時代と⾔われ、新たなことへの挑戦が期待されています。そのとき、経験の多い⼈が正しいとは限りません。良いアイデアを出せるとも限りません。経験・年代・性別・⽴場etc…を超えて、お互いがお互いから、貪欲に学ぶことのできる組織が、変化を味方にできます。だからこそ、新⼊社員からも学んでほしいのです。
若者の声は宝物
余談になりますが、冒頭で触れた大学⽣への講義では、地方銀⾏のイノベーションをテーマに、10個程度の地方銀⾏の変⾰の事例をとりあげて説明しました。そのなかで「地方銀⾏の経営Topの若返りもみられ、50歳の頭取や、40代の持株会社社⻑も登場している」という話題も盛り込みました。かつての地方銀⾏界の常識からすると、大きな変⾰だと考えたからです。
すると、「学⽣から⾒ると、50歳は十分に経験ある年齢に思えます。それでも若いのですか」「若い頭取になることで、不都合はあるのでしょうか」という質問がありました。
業界の既存の常識のもとでは、出てこない質問です。ハッとさせられるような気付き・考えるキッカケを与えてくれるという観点で、若者の声は宝物だと感じました。
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新⼊社員に限らず、中途社員、社外取締役など、組織に気付きを与えてくれる⼈はたくさんいます。それらの⼈を組織に染めるだけでなく、それらの⼈から貪欲に学び、気づきを得ることで、次世代を切り拓いていってください。
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以上、髙橋昌裕からのYELLでした。