Vol.55 ⽀店⻑の「高校教師型」化(案)(2022.12.27)

検討のキッカケに

ニュースレターでは、本心から「こうしては」「こうあってほしい」ということを書いています。しかし、今回はそこまで信念を持ったものではありません。「可能性を拡げるための検討のキッカケ」になればいいな、という思いで投げかけます。

「高校教師型」

投げかけるアイデアは、⽀店⻑の「⼩学校の先生型」から「高校教師型」への転換です。

現在の⽀店⻑は「⼩学校の先生型」です。⼩学校では、担任の先生が、クラスに関わる責任を負っています。国語・算数・理科・社会等、ほぼ全ての教科を担任の先生が教え、一部の専門科目(音楽等)のみ科目専担の先生に委ねています。

地⽅銀⾏もこれに類し、M&Aなど専門性を要する一部業務は本部の専門部隊や外部に委ねるものの、それ以外は⽀店⻑の職責となっています。

それに対し、高校では、担任がクラスの責任を負うのは変わらないものの、直接授業をするのは自身の専門科目のみです。それ以外は、各科目のプロである他の先生に授業を委ねています。

この形式を採り入れるのが「高校教師型」です。店の業績・運営等に関する責任は⽀店⻑が持ち続けます。⽀店⻑が得意な領域も、引き続き⽀店⻑が指導します。一⽅で、それ以外の業務は⽀店⻑から切り離して、「適切な」他者(本部役職員・別の⽀店⻑など)に委ねるのです。法⼈先・個⼈先にかかわらず、お客様対応の進め⽅や提案にむけた作戦の検討も、切り離しの対象です。お客様Aは現・⽀店⻑が営業担当者の相談相⼿となるものの、お客様Bは本部の〇部⻑、お客様Cは他店の△⽀店⻑が相談相⼿になるイメージです。

組織全体で「適切な」⼈がサポートし、組織全体で向き合い取り組むことで、お客様対応も含めた⽀店業務を、進化・深化させていく考えです。

3つの背景

アイデアを考えた背景は3つあります。

1つは、⽀店運営の大変さが増していることです。昔より少ない⼈数・短い時間で⽀店業務をまわし、若⼿の離職増加への心配など「⼈」に関するケアの必要性も高まっています。大事な資産である「⼈」への対応を疎かにしないためにも、“全て⽀店⻑”からの脱却の必要性を感じました。

2つめは、ソリューションの多様化です。「⼩学校の先生型」は、⽀店⻑が担当者よりも知識・経験が豊富で、適切な指導が期待できるときに機能します。融資獲得が絶対的中心の時代には、その道で経験を積み重ねてきた⽀店⻑に指導を委ねるのは理に適っていました。しかし、提供可能なソリューションが広がっていくなか、⽀店⻑が未経験なものも数多くあります。研修が担当者に偏っているため、⽀店⻑より担当者の⽅が知識・勘所を持っているケースも珍しくはありません。ソリューション提供の⾯からも、全てを⽀店⻑が指導することの限界を感じます。

3つめは、⼥性登⽤の側⾯からの制約排除です。近時、⼥性⽀店⻑が増えてきました。これまでの経歴をもとに、個⼈特化店での⽀店⻑を任されるケースが多いようです。この図式だと、⼥性⽀店⻑の数は、個⼈特化店の数に制約を受けます。融資経験が豊富でないと、指導への不安から一般店の⽀店⻑になれないのは、可能性を狭めてもったいないことです。

お客様も嬉しいはず

「高校教師型」を、お客様も望む可能性は大いにあります。前提として、お客様は自社・自身にプラスとなる、良い活動・提案をしてほしいと思っています。

今の⽀店⻑ではなく、すごく世話になった何代か前の⽀店⻑(現・本部のD部⻑)が考えてくれた提案の⽅が、お客様の深い理解に基づいていて受け入れられるかもしれません(この場合、当該お客様に関する営業担当者の適切な相談役は、D部⻑)。ある業界のお客様への提案は、その業界への対応経験が豊富な別の⽀店⻑(E⽀店⻑)の⽅が、業界特有の事情を踏まえた、痒いところに⼿が届くものとなりそうです(同、相談役はE⽀店⻑)。M&Aなど専門性の高いソリューションの提案も同様です。

お客様は、銀⾏組織全体のなかで「適切な」⼈が一緒に考えてくれたものを、より良い活動・提案と思うのではないでしょうか。

荒唐無稽だろうか︖

先ほど、アイデアを考えた背景は3つあったと書きました。正確に言うともう1つあります。「オンラインミーティング環境の発達」です。

コロナ前のように、⾏内の日常コミュニケーション⼿段が対⾯か電話しかなければ、この案は成り⽴ちません。しかし、各⾏とも急速にzoomのようなオンラインミーティング環境が整備され、離れた場所(本部や他⽀店)にいる⼈とも、顔を⾒ながら、資料を共有しながら相談をすることができるようになりました。物理的な場所の制約は、過去の遺産になったわけです。オンライン環境が整ったことで、あながち「高校教師型」は荒唐無稽な策とは言えなくなったのではないでしょうか。

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今回は、「可能性を拡げるための検討のキッカケ」として投げかけました。0(やらない)か1(やる)かの2択で考える必要はありません。新任から2店目までは「高校教師型」で3店目から「⼩学校の先生型」というやり⽅や、特定のエリアだけ「高校教師型」というやり⽅だってあり得ます。この検討は、突き進めると「地⽅銀⾏の⽀店とは」にも繋がる意味あるものだと考えます。

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変化の時代にあって、多くの組織で、固定概念にとらわれず、可能性を拡げる検討が進むことを期待しています。

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以上、髙橋昌裕からのYELLでした。