Vol.41 水や肥料を与えるばかりが是ではない(2021.8.2)

⽔や肥料の与え方

コロナ禍で家にいる時間が増えたこともあり、⾃宅まわりの植⽊の整備を進めています。観葉植物も買い集めるようになりました。これまで植⽊や観葉植物には、ほぼ興味がなかったので、育て方や手入れの仕方を一から学んでいます。

そのなかで、⽔や肥料の与え方は、なるほどと思いました。観葉植物の栽培に少しでも携わったことがある⼈にとっては常識中の常識なのでしょうが、どんどん元気に育って欲しいとの思いから⽔をあげすぎると根腐れしてしまい、弱り気味なので回復させたいと肥料を与えると刺激が強すぎて負荷に耐えられず枯れてしまうそうです。理屈を知って納得しました。良かれと思ってやったことが、やり方を間違えると逆効果というわけです。

営業担当者の話を聞いてわかったこと

地域⾦融機関の話に転じます。

いくつかの地域⾦融機関の、営業第一線で奔⾛する⼗数⼈の若手・中堅の営業担当者と話をする機会が⽴て続けにありました。

どのような活動をしているのか、お客様対応で嬉しかったことはなにか、どういった活動ができるようになりたいか等々、生の声を聞くなかで、次のようなことが(改めて)わかりました。

1)個々のモチベーションの違い
コロナへの対応を機に中小企業支援のやり甲斐を感じ、「もっとお客様の役にたてるようになりたい」と意欲に溢れている⼈。お客様対応のことよりも、「目標達成」に強い意欲ないしは不安、関⼼をもっている⼈。残念ながら営業活動の意義を感じておらず「イヤイヤ感」が伝わってくる⼈etc…

2)スキルレベルの違い
お客様の本業支援につながる活動までできそうな⼈。資⾦繰りの不安解消に資するアドバイスができそうな⼈。生の決算書の読み解きができない⼈。お客様との対話のやりとりができそうもない⼈。伝統的な⾦融商品の勧奨までならできる⼈。再生支援レベルの⾼度なことまでできるかもしれない⼈etc…

3)時間的な余裕・時間の使い方の違い
余裕をもって業務を進めている⼈。時間がないと嘆く⼈。いつも「忙しい忙しい」と言ってそうな⼈。業務時間外に⾃己研鑽に励む⼈。平日時間内とそれ以外の時間とをキッチリとメリハリつけている⼈etc…

こうした違いがある一方で、共通していることもありました。それは、本部から営業現場にかけられている期待の大きさです。

期待があるが故に、たくさんの施策・新たなソリューション等が下りてきています。しかし、それに「過剰感・満腹感」を覚え、「消化不良」を訴える⼈も多くいました。

また、⼈材育成への注⼒も各⾏共通で、昨年はコロナの影響で⼗分に実施できなかった研修も、復活傾向にあるようです。ただこれについても、本部の思いとは裏腹に、「やらされ感」を覚える⼈や、「⾃身のニーズやレベルにあわない」と感じている⼈も少なからずいました。

気になるのは、本部が良かれと思って提供しているものが、その思い通りに受け取られておらず、ときにマイナスの効果をも生み出してしまっていることです。

提供者側の優しい気持ちを活かすために

この状態、冒頭で述べた⽔や肥料の与え方と似ていると思いませんか。

根本にあるのは、もっと育って欲しい、もっと強くなって欲しい、もっとサポートしたいという、提供者(本部)側の優しい気持ちです。ここに悪気は微塵もありません。

しかし、それが結果としてうまくいっていないときに、受け側(営業現場)を叱咤激励するのは、根腐れした観葉植物を責めるのと同じです。⾃らが与えた⽔・肥料の量やタイミング、内容が相応しいものだったのかに⽴ち戻るべきでしょう。

3つのポイントに整理してみます。

➀我慢する勇気をもつ
営業現場は、すでに大量の⽔を浴びて溺れかけているかもしれません。そのとき大事なのは、新たな⽔を肥料を注ぐことではなく、時がくるまで我慢する勇気です。

うまくいってないときほど、挽回のために施策などを次々に出したくなりますが、それが是とは限りません。

②渇望感を醸成する
内向き志向が強くなりすぎて「お客様の役にたちたい」という意欲が低位になっていたり、学ぶ意欲が乏しくなっていたりする⼈には、動機付けが必要です。肥料が健康時に使うドーピング的なものに対し、動機付けは⾃然治癒⼒を取り戻すサプリメントのようなイメージです。両者の順番と使いどころを間違えてはいけません。

動機付けによって、「もっとお客様に何かできるようになりたい」「もっと成⻑したい」と渇望感を取り戻すことができれば、⽔や肥料が次なる成⻑の原動⼒となります。

③千差万別に対応する
渇望感が⾼まったとしても、それぞれの興味関⼼、現在のスキルレベルなどは違います。また、全員をホームランバッターに仕⽴て上げようとするのも無理があります。千差万別を前向きにとらえ、チームで機能する形での役割分担を進め、研修等に関しても興味関⼼・レベルにあわせて⾃由に選べるような柔軟性が必要です。脱・一律対応です。


                     .

                     .

提供者側の優しい気持ちが、受け側の成⻑にきちんとつながり、結果として「やり甲斐」をもつ⾏職員が一⼈でも増えることを期待しています。

以上、髙橋昌裕からのYELLでした。